古事記|伊邪那岐と伊邪那美④|火の神の誕生と伊邪那美の死。
イザナミ、火の神を生む
現代語
さて、伊邪那岐命と伊邪那美命の二人は、さらに神をお生みになります。
次にお生みになられた神の名は、
- 鳥之石楠船神(トリノイハクスフネの神)、亦の名を天鳥船(アメノトリフネ)といいます。
- 次に大宜都比賣神(オホゲツヒメの神)をお生みになられました。
- そして、火の神、火之夜藝速男神(ホノヤギハヤヲの神)をお生みになられました。
火の神の亦の名を火之炫毗古神(ホノカガビコの神)といい、またの名を火之迦具土神(ホノカグツチの神)といいます。
この火の神をお生みになられた時に、伊邪那美命は美蕃登(みほと:女陰)を焼かれて病に伏せられました。
原本
次生神名、鳥之石楠船神、亦名謂天鳥船。次生大宜都比賣神。此神名以音。次生火之夜藝速男神夜藝二字以音、亦名謂火之炫毘古神、亦名謂火之迦具土神。迦具二字以音。因生此子、美蕃登此三字以音見炙而病臥在。
簡単な解説
鳥之石楠船神(天鳥船)は、国譲りの神話で登場します。神の乗り物というような位置づけになりましょう。楠木で作った石のように頑丈な船です。
大宜都比賣神(オオゲツヒメ)は、食物を司る神です。自分の体から様々な食物を出してくる、冷蔵庫のような神様ですね。後に須佐之男命との絡みがありますので、覚えておいてください。
火之迦具土神、一般的には迦具土とだけで呼ばれるようです。火を司る神ですので火伏の神として、全国の秋葉神社や愛宕神社などの祭神として祀られています。
今でもそうでしょうが、古代の出産は母子ともに命がけだったと思います。そういう側面も表しているような気がします。蛭子、淡嶋の誕生もそういうことなのでしょう。
苦しむイザナミから現れた神々
現代語
病に臥せった伊邪那美命。歩くこともできずただ寝床でもがき苦しみます。
その、多具理(たぐり:嘔吐)から生まれた神の名は、
- 金山毗古神(カナヤマビコの神)、
- 次に金山毗賣神(カナヤマビメの神)
といいます。
次に屎(くそ:大便)から生まれた神の名は、
- 波邇夜須毗古神(ハニヤスビコの神)、
- 次に波邇夜須毗賣神(ハニヤスヒメの神)
といいます。
次に尿(ゆまり:小便)から生まれた神の名は、
- 彌都波能賣神(ミツハノメの神)、
- 次に和久産巣日神(ワクムスヒの神)
といいます。
ちなみに、この和久産巣日神の子が豐宇氣毗賣神(トヨウケビメの神)です。
このように、苦しむ伊邪那美命の体から出たものから、天鳥船より豐宇氣毗賣神まで、合わせて八柱の神が出現しました。
そしてついに、伊邪那美命は火の神をお生みになられたことで、神避(かむさり:お隠れ)になられたのです。
このように、伊邪那岐命と伊邪那美命の二人でお生みになられた嶋は、すべてで十四嶋、お生みになられた神はすべてで三十五柱にものぼりました。
これらは伊邪那美命がお亡くなりになられる前にお生みになられたものです。ただし、オノゴロ嶋は、お生みになられたものではなく、また、蛭子と淡嶋は、子の数には入れません。
原本
多具理邇此四字以音生神名、金山毘古神訓金云迦那、下效此、次金山毘賣神。次於屎成神名、波邇夜須毘古神此神名以音、次波邇夜須毘賣神。此神名亦以音。次於尿成神名、彌都波能賣神、次和久產巢日神、此神之子、謂豐宇氣毘賣神。自宇以下四字以音。故、伊邪那美神者、因生火神、遂神避坐也。自天鳥船至豐宇氣毘賣神、幷八神。
凡伊邪那岐、伊邪那美二神、共所生嶋壹拾肆嶋、神參拾伍神。是伊邪那美神、未神避以前所生。唯意能碁呂嶋者、非所生。亦姪子與淡嶋、不入子之例也。
簡単な解説
嘔吐から生まれた金山比古と金山比売は、鉱山の神です。鉱脈の様子や金属が溶けた様子を画像をご覧いただきましたら、嘔吐から生まれたことが理解できると思います。火の神の出現で、金属の利用が可能になったということの象徴でしょうか。
ウンコさんから生まれた波邇夜須毗古神(ハニヤスビコ)と波邇夜須毗賣神(ハニヤスヒメ)は、粘土の神です。これは、なるほどですよね。割れにくい土器の製造が可能になったということでしょうか。
おしっこから生まれた彌都波能賣神(ミツハノメ)は、水の神。井戸などの管理された水の神という側面が強いです。
一方、和久産巣日神(ワクムスヒ)は、穀物の神です。その子の豊受比売神(トヨウケビメ)は、神宮外宮の豊受大神です。
最後の三柱の神は、火と関係なさそうですね。
しかし、この一連の神々を強引に意味あるものにしようとするならば、、、
人類が火を熾すことに成功し、火をコントロールできるようになって、、、金属を製錬して農具に加工し、陶器をつくって種籾を長期間貯蔵することが出来るようになった。そこに、灌漑用水を引く知恵を得て、さらに、焼畑の技術を発見して、穀物がすくすくと育つ環境が整っていき、次世代の発展が約束された。 |
というように、「文明が発達する過程」をあらわしていると考えることもできそうです。
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