大国主命①|稲羽の素兎(因幡のしろうさぎ)

2019年9月4日

時は流れて、大国主神のお話です。

この大国主神には八十神(やそがみ=たくさん)の兄弟がいましたが、その兄弟たちは、それぞれ治めていた国をすべて大国主神に譲りました。

今から、そのわけをお話します。

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稲羽の素兎

現代語

稲羽の国に、たいそう美しい姫がおられました。その名を八上比賣(ヤガミヒメ)といいます。

兄の八十神は、皆が、その八上比賣を妻にしたいと思っていて、求婚するために一緒に稲羽に出掛けました。

その時、一番下の弟の大穴牟遅神(オホナムヂ=大国主神)に袋を背負わせ、僕(しもべ)として連れて行きました。

氣多(けた)の岬まで来た時、毛を剥がれた一羽の裸の兎が伏せっているのを見つけました。

八十神はその菟に、

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どうしんだい?
海の水を浴びて、風が体によく当たるように高い山の峰で伏せっていると良いぞ。

と嘘を教えました。

そこで、菟は八十神の教えどおりにしてみましたが、潮が乾くにつれて、体の皮はことごとく風に吹かれてひびが入ってしまいました。

酷い痛みに苦しんで泣いていると、最後にやって来た大穴牟遅神がその菟を見て尋ねました。

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どうしたんだい?なんで泣いているんだい?
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私は、淤岐嶋(おきのしま)に住んでいる兎です。この地に渡ろうと思いましたが、渡る方法がありませんでした。

兎は続けます。

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そこで思いついたのが、海和邇(うみのわに)をだまして、、、
『兎と和邇、どちらが仲間が多いかを競おうではないか。おまえは仲間を皆連れてきて、この島から氣多の岬まで、横になって並んでくれ。私はその上を走りながら数えて渡ろう。そうすれば、私の仲間とどっちが多いかが判るだろう。』
と持ち掛けたんです。
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そうすると、だまされて横一列に並んでくれたので、数えながらその上を踏んで行き、この地にちょうど下りようとした時、
『おまえらは私にだまされたのだ。』
と、ついつい言ってしまったもんですから、怒った最後の和邇が私を捕まえ、私の毛を剥いでしまったのです。

兎は、さらに話し続けます。

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そんなこんなで、ここで泣き悲しんでいると、先にやって来た八十神が
『海の潮を浴び、風に当たって伏せっていろ。』
と教えてくれました。その通りにしたら、体中すべてが傷ついてしまいまして、、、だから泣いているのです。

大穴牟遅神は、菟に

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それはいけない。今すぐに河口に行って、真水で体をきれいに洗いなさい。 そして、河口にはえている蒲の花を敷き詰めて、その上に転がれば、おまえの体は元の肌のようにきっと治るだろう。

と教え諭しました。

教えられた通りにすると、体は元通りになりました。この菟が稲羽之素菟(いなばのしろうさぎ)で、今は菟神(うさぎがみ)といわれています。

最後に菟は大穴牟遅神に、自分の予見を打ち明けました。

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あの八十神は、絶対に八上比賣を得ることはできません。袋を背負ってはいても、あなた様が得られることになるでしょう。

原本

故、此大國主神之兄弟、八十神坐。然皆國者、避於大國主神。所以避者、其八十神、各有欲婚稻羽之八上比賣之心、共行稻羽時、於大穴牟遲神負帒、爲從者率往。於是、到氣多之前時、裸菟伏也、爾八十神謂其菟云「汝將爲者、浴此海鹽、當風吹而、伏高山尾上。」故其菟、從八十神之教而伏、爾其鹽隨乾、其身皮悉風見吹拆、故痛苦泣伏者、最後之來大穴牟遲神、見其菟言「何由、汝泣伏。」

菟答言「僕在淤岐嶋、雖欲度此地、無度因。故、欺海和邇此二字以音、下效此言『吾與汝競、欲計族之多小。故汝者、隨其族在悉率來、自此嶋至于氣多前、皆列伏度。爾吾蹈其上、走乍讀度。於是知與吾族孰多。』如此言者、見欺而列伏之時、吾蹈其上、讀度來、今將下地時、吾云『汝者、我見欺。』言竟、卽伏最端和邇、捕我悉剥我衣服。因此泣患者、先行八十神之命以、誨告『浴海鹽、當風伏。』故、爲如教者、我身悉傷。」

於是大穴牟遲神、教告其菟「今急往此水門、以水洗汝身、卽取其水門之蒲黃、敷散而、輾轉其上者、汝身如本膚必差。」故、爲如教、其身如本也。此羽之素菟者也、於今者謂菟神也。故、其菟白大穴牟遲神「此八十神者、必不得八上比賣。雖負帒、汝命獲之。」

簡単な解説

気多の前

この逸話の舞台「気多の前」はどこなのでしょうか。

一般的には、鳥取県鳥取市白兎が伝承地とされています。「気多岬」「白兎神社」などがあります。

そして、気多岬の目の前には「淤岐島」が浮かんでいます。島から海岸まで130mぐらいでしょうか。陸へに向かって並ぶ小さい島を伝って渡れば、水上は60mほどでしょう。

体調2mのワニだと、30匹ほど必要ですね。

素兎

古事記には「白兎」とは書かれていないんですね。「裸兎」「素兎」と表現されています。毛をむしり取られた兎という意味です。

「兎白」と書かれてあるのは、「兎が白しけらく」と読んで「兎が打ち明けるには、」という意味で、白い兎を表現したものではないのです。

この兎は白兎か黒兎か茶兎かは、わからないのです。でもまあ、毛をむしられたらどれも肌色なんでしょうから、白兎でもいいっちゃあいいですが、、、

兎は神?

「白しけらく」の部分を「自分の予見を打ち明けました」と訳しました。これは、まさしく「予言」で、神のなせる業なのです。

ということからして、

神が兎に化けて八十神一行を試したのではないか?誰のために?八神姫のために。

というのが私の推理です。はっはー。

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