神武③|東征|宇陀の戦い。エウカシとオトウカシの兄弟。

2019年9月4日

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吉野で軍勢を得る

現代語

そこで、遣わされた八咫烏の後を進んで行き、吉野河の河尻(下流)に到着したところ、

竹を編んで作った漁具で漁をしている人がいました。

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そちは誰じゃ?
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私は国神(くにつかみ)で、贄持之子(ニヘモツノコ)と申します。

この贄持之子は阿陀の鵜飼(あだのうかひ)の祖神です。

 

そこから進んでいかれると、尾のある人が井から現れ、井からは光が出ていました。

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そちは誰じゃ?
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私は国神で、井氷鹿(イヒカ)といいます

これは吉野首等(よしののおびとら)の祖神です。

 

その山に入っていかれると、また尾のある人に出会いました。その人は巨石を押し分けて現れました。

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そちは誰じゃ?
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私は国神で、名は石押分之子(いはおしわくのこ)といいます。今、天神御子がお越しになると聞きましたので、お迎えに参りました

この者は吉野国巣(よしののくにす)の祖神です。

原文

故隨其教覺、從其八咫烏之後幸行者、到吉野河之河尻時、作筌有取魚人。爾天神御子、問「汝者誰也。」答曰「僕者國神、名謂贄持之子。」此者阿陀之鵜飼之祖。從其地幸行者、生尾人、自井出來、其井有光。爾問「汝誰也。」答曰「僕者國神、名謂井氷鹿。」此者吉野首等祖也。卽入其山之、亦遇生尾人、此人押分巖而出來。爾問「汝者誰也。」答曰「僕者國神、名謂石押分之子。今聞天神御子幸行、故參向耳。」此者吉野國巢之祖。

簡単な解説

熊野で、大熊によって惑わされた神武一行は、吉野に到着。吉野では反抗勢力は無く、むしろ歓迎されているような書き様ですね。

それもそのはず、古事記編纂を指示した天武天皇は、都を離れて壬申の乱を起こすまで、この吉野で、吉野の土着の民たちの協力を得ながら、体制を整えていたのです。

贄持之子

贄は生贄(いけにえ)の贄で、神様への供物のことですから、神に捧げる供物を持つ人というような意味の神名です。吉野川土着の漁労民でしょう。

井氷鹿

井から現れて、井が光っているとは、何を指すのでしょう。

おそらく、水銀だと思います。水銀が含まれる土は赤茶色をしているのですが、これを粉砕して熱すると水銀が気化。その気体を冷やすと銀色に輝く水銀がとれるという寸法です。

この「井氷鹿」は井戸で水銀を製錬している人を表しているのだと思います。

石押分之子

今度は、大きな石を押し分けてやってきた人です。先ほどが水銀ですので、今度は鉄か銅か。金属を精錬する民ではないでしょうか。

この後裔の国巣(国栖)は飛鳥時代、まさしく、大海人皇子(天武天皇)を助けた吉野の民です。

 

 

宇陀のエウカシとオトウカシ

現代語

吉野から蹈穿越(ふみうかちこえ=山越え)をして、宇陀(うだ)に到着しました。なので、この地を宇陀之穿(うだのうかち)と云います。

この宇陀には、兄宇迦斯(エウカシ)と弟宇迦斯(オトウカシ)と云う兄弟が住んでいました。

まず二人に八咫烏を遣いに出して、服従を打診しました。

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今、天神御子がお着きになられましたが、あなたたちはお仕え申し上げますか?

それを聞いた兄宇迦斯は鳴鏑を射て、八咫烏を追い返しました。

その鳴鏑が落ちた所を訶夫羅前(かぶらさき)といいます。

更に、兄宇迦斯は、迎撃するために兵士を集めようとしましたが、集まりが悪かったので、ひとまずは「仕える」とウソを言って騙しておいて、大殿の中に押機(おしき)を作って騙し討ちをしようと待ち構えました。

 

しかし、先回りした弟宇迦斯が神倭伊波禮毘古命の所に参上して、

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天神御子様に申し上げまする。

はずかしながら、私の兄の兄宇迦斯は、天神御子の使いを追い返し、迎撃のために兵士を集めようとしました。しかし集まりませんでしたので、大殿を建てて、あろうことか、その中に押機を張って、待ち構えております。

このことを告白しようと思い参上つかまつりました。

と申し上げました。

原本

自其地蹈穿越幸宇陀、故曰宇陀之穿也。故爾、於宇陀有兄宇迦斯自宇以下三字以音、下效此也弟宇迦斯二人。故先遣八咫烏問二人曰「今天神御子幸行。汝等仕奉乎。」於是兄宇迦斯、以鳴鏑待射返其使、故其鳴鏑所落之地、謂訶夫羅前也。將待擊云而聚軍、然不得聚軍者、欺陽仕奉而、作大殿、於其殿內作押機、待時。弟宇迦斯先參向、拜曰「僕兄・兄宇迦斯、射返天神御子之使、將爲待攻而聚軍、不得聚者、作殿其內張押機、將待取。故、參向顯白。」

簡単な解説

宇陀之穿(うだのうかち)

現在、宇陀市に菟田野宇賀志(うだのうかし)という地名があります。おそらくは、ここで繰り広げたらた物語なのでしょう。

 

訶夫羅前(かぶらさき)

伝承地は不明です。

 

エウカシ討伐

現代語

そこで、大伴連等の祖神の道臣命(ミチノオミの命)と久米直等の祖神の大久米命(オオクメの命)の二人が、兄宇迦斯を呼び出し、罵声をあびせます。

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この大殿は、お前が御子に仕えると言って建てた立派な屋敷だろう。
お前が先に入り、お仕えすると云うことの始末を明らかにせよ!

そして、太刀の柄に手をかけて、矛先で突いて促し、矢を向けて、兄宇迦斯を大殿の中に追いやると、兄宇迦斯は自分が作った押機が落ちてきて死にました。

そこで、この地を宇陀之血原(うだのちはら)といいます。

その後、神倭伊波禮毘古命は、弟宇迦斯が献上したものをすべて兵士たちにお与えになられ、歌を詠いました。

 

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宇陀の高台で、鴫(シギ)を獲る網を張る、
待っていると、鴫が掛からずに、
思いもよらず鷹のような鳥が掛かった古女房が菜を求めたならば、立蕎麦のような実の少ないものを、取ってくれてやれ。新妻が菜を求めたならば、イチサカキのような実の詰まったものを、取ってやれ。えーえー、しやごしや。あーあー、しやごしや

 

この弟宇迦斯は、宇陀の水取等(みずとり等)の祖神である。

原文

爾大伴連等之祖・道臣命、久米直等之祖・大久米命、二人、召兄宇迦斯罵詈云「伊賀此二字以音所作仕奉於大殿內者、意禮此二字以音先入、明白其將爲仕奉之狀。」而、卽握横刀之手上、矛由氣此二字以音矢刺而、追入之時、乃己所作押見打而死。爾卽控出斬散、故其地謂宇陀之血原也。

然而其弟宇迦斯之獻大饗者、悉賜其御軍、此時歌曰、

宇陀能 多加紀爾 志藝和那波留 和賀麻都夜 志藝波佐夜良受 伊須久波斯 久治良佐夜流 古那美賀 那許波佐婆 多知曾婆能 微能那祁久袁 許紀志斐惠泥 宇波那理賀 那許婆佐婆 伊知佐加紀 微能意富祁久袁 許紀陀斐惠泥 疊疊音引志夜胡志夜 此者伊能碁布曾。此五字以音。阿阿音引志夜胡志夜 此者嘲咲者也。

故、其弟宇迦斯、此者宇陀水取等之祖也。

簡単な解説

宇陀之血原(うだのちはら)

宇賀志に、宇賀神社があります。ここが、エウカシが切り刻まれて血が流れた場所とのことです。宇賀神社には、宇迦斯神が祀られていますが、おそらく村人が鎮魂のためにエウカシを祀ったものと推察されます。

大殿

菟田野宇賀志に「ヲドノ」という小字があり、そこに大殿の伝承地があります。

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