古事記|大国主神④|根の国からの旅立ち
須佐之男命の後継者
現代語
眠りふけった大神を見た大穴牟遅神は、

大穴牟遅神は、はやる心を押さえつつ、寝ている大神の髪を広間の垂木に結びつけ、大きな岩で広間の戸をふさぎます。
そして、妻の須勢理比賣を背負い、大神の生大刀(いくたち)と生弓矢(いくゆみや)それに天詔琴(あめののりごと)を盗み取って、忍び足で逃げ出そうとしました。
その時です。
天詔琴が木に触れてしまい、大地が鳴り轟くような大きな音がしました。
寝ていた大神は、これを聞いて驚き、起きた拍子に広間を引き倒してしまいました。

しかし、大神が垂木に結ばれていた髪を解いている間に、大穴牟遅神らは遠くへと逃げ去ることができました。
大神が、黄泉比良坂(よもつひらさか)まで追いかけて来て、遥か遠くを我が娘を背負って走いく大穴牟遅神に向かって、大地を揺るがすような大きな声で叫びました。

お前が持っている生大刀と生弓矢で、お前の兄弟たちを坂の裾まで追い払い、川の瀬まで追い払えー!
そして、おまえは大国主神となり、また、宇都志国玉神(うつしくにたまのかみ)となれー!
さらに、叫びます。それは、誰もが恐れる荒ぶる大神の、彼らしい祝福の言葉でした。

この野郎めー!
大穴牟遅神(オオナムヂ)は大国主(オホクニヌシ)と名を変えて、大刀と弓で、八十神を坂の裾まで追い払い、川の瀬まで追い払って、初めてご自身の国をお造りになられました。
そして、ようやく大国主神は、かつて稲羽で約束した通り八上比賣を娶りました。しかし八上比賣は、正妻の須勢理比賣に遠慮して、生んだ子を木の股に刺し挟んで、稲羽にお帰りになりました。
その子の名を木俣神(キマタの神)といいます。亦の名を御井神(ミイの神)といいます。
原本
爾握其神之髮、其室毎椽結著而、五百引石取塞其室戸、負其妻須世理毘賣、卽取持其大神之生大刀與生弓矢及其天詔琴而、逃出之時、其天詔琴、拂樹而地動鳴。故、其所寢大神、聞驚而、引仆其室、然解結椽髮之間、遠逃。
故爾追至黃泉比良坂、遙望、呼謂大穴牟遲神曰「其汝所持之生大刀・生弓矢以而、汝庶兄弟者、追伏坂之御尾、亦追撥河之瀬而、意禮二字以音爲大國主神、亦爲宇都志國玉神而、其我之女須世理毘賣、爲嫡妻而、於宇迦能山三字以音之山本、於底津石根、宮柱布刀斯理此四字以音、於高天原、氷椽多迦斯理此四字以音而居。是奴也。」故、持其大刀・弓、追避其八十神之時、毎坂御尾追伏、毎河瀬追撥、始作國也。
故、其八上比賣者、如先期、美刀阿多波志都。此七字以音。故、其八上比賣者、雖率來、畏其嫡妻須世理毘賣而、其所生子者、刺挾木俣而返、故名其子云木俣神、亦名謂御井神也。
簡単な解説
敵をあざむくことを覚えた大穴牟遅神は、最後には自分の発想力と実行力で、須佐之男命から逃れることが出来たのです。
八十神に殺されるとわかっていながらも抗えなかった子供時代からすると、大成長です。
このように、大穴牟遅神は須佐之男命から帝王学を学んだようですね。そしてそこには、須佐之男命の父性を感じます。
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