16代仁徳天皇④|速總別王と女鳥王の謀反

スポンサーリンク

女鳥王を廻る争い

現代語

天皇は、弟の速總別王(はやぶさわけのみこ)を仲人として、異母妹の女鳥王(めとりのみこ)を召されました。

ところが、女鳥王は速總別王に

「大后のヤキモチのお蔭で、八田若郎女は独りにされてしまいました。だから、私はお仕え致しません。私をあなた様の妻にしてくださいな。」

と言いました。

そして、二人は結婚てしまいました。速總別王は天皇の命に背いたのです。

天皇は女鳥王の家に出向き、女鳥王の寝室の前に立って、機を織っている女鳥王に歌で尋ねました。

メトリの女王の
織つていらつしやるは、
誰の衣でしようかね。

女鳥王が答えて詠った歌は、

大空ぶハヤブサワケの王のお羽織の料です。
速總別の襲のものです(お召し物です)

天皇は女鳥王のお気持ちを悟り、宮殿に戻りました。

その後、速總別王が来て、女鳥王が歌った歌

雲雀は天に飛び翔ります。
大空高く飛ぶハヤブサワケの王樣、
サザキ(仁徳天皇)をお取り遊ばせ。

この歌を伝え聞いた天皇は、誅殺するために兵を差し向けた。

速總別王と女鳥王が、一緒に倉椅山(くらはしやま)に逃げ登ったときに速總別王が詠んだ歌は、

梯子を立てたような、クラハシ山がしいので、
岩に取り附きかねて、わたしの手をお取りになる。

また、歌うことに、

梯子を立てたようなクラハシ山は嶮しいけれど、
わが妻と登れば嶮しいとも思いません

速總別王(はやぶさわけのみこ)と女鳥王(めとりのみこ)は、倉椅山を越えて宇陀の蘇邇(そに)に着いたときに、殺されました。

原文

天皇、以其弟速總別王爲媒而、乞庶妹女鳥王。爾女鳥王、語速總別王曰「因大后之強、不治賜八田若郎女、故思不仕奉。吾爲汝命之妻。」卽相婚。是以、速總別王不復奏。爾天皇、直幸女鳥王之所坐而、坐其殿戸之閾上。於是女鳥王、坐機而織服。爾天皇歌曰、

賣杼理能 和賀意富岐美能 淤呂須波多 他賀多泥呂迦母

女鳥王、答歌曰、

多迦由久夜 波夜夫佐和氣能 美淤須比賀泥

故、天皇知其情、還入於宮。此時、其夫速總別王、到來之時、其妻女鳥王歌曰、

比婆理波 阿米邇迦氣流 多迦由玖夜 波夜夫佐和氣 佐邪岐登良佐泥

天皇聞此歌、卽興軍欲殺。爾速總別王、女鳥王、共逃退而、騰于倉椅山、於是速總別王歌曰、

波斯多弖能 久良波斯夜麻袁 佐賀志美登 伊波迦伎加泥弖 和賀弖登良須母

又歌曰、

波斯多弖能 久良波斯夜麻波 佐賀斯祁杼 伊毛登能煩禮波 佐賀斯玖母阿良受

故、自其地逃亡、到宇陀之蘇邇時、御軍追到而殺也。

簡単な解説

速總別王(はやぶさわけのみこ)

応神天皇が、桜井田部連垂根の娘、糸井比売(いといひめ)を娶って生まれた皇子です。仁徳天皇とは異母兄弟の間柄となります。

女鳥王(めとりのみこ)

応神天皇が、和爾氏の祖となる日触使主の娘、宮主矢河枝比売(みやぬしやかわひめ)を娶って生まれた皇女です。

そうです。宇遅能和紀郎子八田若郎女と同じ母を持つ姫です。宇遅一族なのです。

宇治の反乱

今回の話はヤキモチの話ではありません。

皇后が恐れていた反乱が起こりかけたのです。応神天皇の皇子に宇治一族の皇女が仁徳政権打倒をけしかけたのです。

まだまだ天皇の地位は盤石ではなかったということですかね。

倉椅山(くらはしやま)

桜井市に大字倉橋という地名が残っています。また、一説には音羽山のことだとも。

蘇邇(そに)

奈良県宇陀郡曽爾村です。関西では、ススキがたなびく高原で有名ですね。

 

山部大楯連の罪

現代語

この時、兵を率いていた山部大楯連(やまべのおほたてのむらじ)は、女鳥王が手に巻いていた玉釧(たまくしろ)を盗んで自分の妻に与えました。

その後、宮中で宴会があり、臣下の妻たちも招かれ、大楯連の妻は女鳥王の玉釧を着けて出席しました。

この酒席では、大后の石之日賣命が、自ら大御酒柏(おほみきのかしは)で、臣下らの妻たちに酒を振舞いました。

その時、大后は大楯連の妻が女鳥王の玉釧を身に着けているのを目にすると、大楯連の妻には与えずに、退出を命じた。

そして夫の大楯連を呼び出し、

「よいか。あの御子らは無礼があったから誅殺された。それは、間違ったことではない。しかし、おまえは自身の主人の腕に巻かれている玉釧を、まだ肌が暖かいうちに盗み取って、妻に与えるとは、いったい何事か!」

と言い捨てると、死刑に処しました。

原文

其將軍山部大楯連、取其女鳥王所纒御手之玉釧而與己妻。此時之後、將爲豐樂之時、氏氏之女等、皆朝參。爾大楯連之妻、以其王之玉釧、纒于己手而參赴。於是大后石之日賣命、自取大御酒柏、賜諸氏氏之女等。爾大后見知其玉釧、不賜御酒柏、乃引退、召出其夫大楯連以詔之「其王等、因无禮而退賜、是者無異事耳。夫之奴乎、所纒己君之御手玉釧、於膚煴剥持來、卽與己妻。」乃給死刑也。

簡単な解説

山部大楯連という人は、どうやら女鳥王に仕えていた人のようですね。

この説話では、皇后は宮に戻ってきたような設定になっているようですが、一般的には、宮へは戻らずに山代で亡くなったとされています。

スポンサーリンク