11代垂仁天皇④|皇后の最期

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皇后奪還作戦

現代語

そこで、屈強で機敏な兵士を選んで、お命じになられました。

「御子を受け取るときに、その母も連れて来い!髪でも手でもどこでもよいから掴んで、連れ出すのだ!」

一方、皇后は、天皇の考えを予測していました。

髮をそり落とし、そり落とした髪を頭に載せ、また、腕輪の紐を腐らせたものを三重に腕に巻き、さらに酒で破れやすくした衣服を身に纏いました。

そして、御子を抱いて城の外に出られました。

兵士らは御子を受け取ると、皇后を捕まえようとしました。

すると、髮を掴むと髪は落ち、手を掴むと腕輪の紐が切れ、衣を掴むと着物が破れてしまい、捕まえることができません。

その為、御子は受け取ることができましたが、皇后を連れ戻すことはできませんでした。

兵士らは引き返して、天皇に申し上げました。

「皇后様の御髮(みぐし)は自然と落ち、御衣はいとも簡単に破れ、腕輪の紐もたやすく切れてしまいました。その為に、皇后様をお連れすることができず、御子様だけをお連れいたしました。」

天皇は後悔され、皇后の玉を作った人らを恨んで、玉造らの土地をすべて召し上げられてた。これが、「地(ところ)不得(えぬ)玉作」の謂れです。

原文

是以、選聚軍士中力士輕捷而宣者「取其御子之時、乃掠取其母王。或髮或手、當隨取獲而掬以控出。」爾其后、豫知其情、悉剃其髮、以髮覆其頭、亦腐玉緖、三重纒手、且以酒腐御衣、如全衣服。如此設備而、抱其御子、刺出城外。爾其力士等、取其御子、卽握其御祖。爾握其御髮者、御髮自落、握其御手者、玉緖且絶、握其御衣者、御衣便破。是以、取獲其御子、不得其御祖。故、其軍士等、還來奏言「御髮自落、御衣易破、亦所纒御手玉緖便絶。故、不獲御祖、取得御子。」爾天皇悔恨而惡作玉人等、皆奪其地、故諺曰「不得地玉作也。」

簡単な解説

黒髪山

奈良市の北部、鴻池球場の北に黒髪山という丘があります。この黒髪山に沙本毘賣(サホビメ)が剃った髪を埋めたという伝承があるようです。

丘の頂上付近には、黒髪山稲荷神社があります。一度、前を通りましたが、ちょっと入るのが躊躇されるような、陰な雰囲気があったのを覚えています。

地(ところ)不得(えぬ)玉作

「土地を持たない玉作」ということなのですが、これが諺らしいです。私には何のことやら、、、です。

 

皇后の最期

現代語

子供を受け取った天皇は、稲城の向こうにいる皇后に、言いました。

「子供の名前は母親が付けるものだぞ。この子は何と名付ける?」

「そうですねぇ。今、火の稲城(いなき)が焼かれ、火中(ほなか)に生まれました。なので、其の子の御名は、本牟智和氣御子(ほむちわけの皇子)と名付けましょう。」

「わかった。では、どのように育てたらよいのだ?」

「御母(みおも)を取り、大湯坐(おほゆえ)・若湯坐(わかゆえ)を決め、お育てください。」

と答えました。

天皇は皇后の言うとおりに育てることにしました。

また、天皇が、稲城の向こうにいる皇后に尋ねました。

「あなたが固く結んだ美豆能小佩(みづのをひも)は誰が解いてくれるのか?

「旦波比古多多須美智宇斯王(タニハノヒコタタスミチノウシの皇子)の娘の兄比賣(エヒメ)・弟比賣(オトヒメ)は、清く正しい方です。どうぞこの方々を皇后になさいませ。。。」

とお答えになられました。

その後、天皇は沙本比古王を誅殺され、妹の皇后も兄と共に亡くなりました。

原文

亦天皇、命詔其后言「凡子名必母名、何稱是子之御名。」爾答白「今當火燒稻城之時而火中所生、故其御名宜稱本牟智和氣御子。」又命詔「何爲日足奉。」答白「取御母、定大湯坐・若湯坐、宜日足奉。」故、隨其后白以日足奉也。又問其后曰「汝所堅之美豆能小佩者、誰解。」美豆能三字以音也。答白「旦波比古多多須美智宇斯王之女、名兄比賣、弟比賣、茲二女王、淨公民、故宜使也。」然、遂殺其沙本比古王、其伊呂妹亦從也。

簡単な解説

美豆能小佩(みづのをひも)を解く

私の認識は以下の通りです。間違いかも知れませんが、、、

天皇が神となる神事「禊の聖水」に関係する言葉らしく、天皇が真に神になるためには禁欲生活を一定期間すごさなければならず、誰にも解けない結び方で下衣を固く固く結びます。

禁欲期間が終わり、湯水に入るとき、そこに水の神が現れて、その固く結んだ結び目を解きます。

天皇はこれによって神となり開放され、紐を解いた女神が、神となった天皇の嫁になるのです。

今、垂仁天皇は、「おまえが固く結んだ紐は、いったい誰が解くのだ」といいましたから、「次の皇后は誰がいいと思う?」と言ったということになりましょう。

よくそんなこと、聞けますなぁ。

御母・大湯坐・若湯坐

諸説ありますが、、、

御母は乳母のことでしょう。大湯坐は産婆役。若湯坐は湯浴みをさせる女官のことで、すなわち、将来の天皇の、みづのをひもを解く女となるらしいです。

狭岡神社

名門奈良高校の西の丘に鎮座する狭岡神社には、沙本毘売命がその姿を映したとされる姿見の池(鏡池)があります。

また、こちらの祭神は、祭神は若山咋之神・若年之神・若沙那売神・弥豆麻岐之神・夏高津日之神・秋比売之神・久久年之神・久久紀若室綱根之神の八柱なのですが、もともとは沙本毘売命を祀っていたといわれているようです。

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