第五段 一書(6)-①|神生みと火の神

2020年6月29日

スポンサーリンク

万物に宿る神々

ある書では、このように伝えられています。

伊弉諾尊と伊弉冉尊とが大八洲国(おほやしまのくに)をお生みになられました。

そこで、伊弉諾尊がおっしゃいました。

「我々が生んだ国は、ただただ朝霧立ちこめているだけのようだ。」

その朝霧を吹き払うと、その息から神が成りました。級長戸辺命(しなとべのみこと)とおっしゃいます。または、級長津彥命(しなつひこのみこと)とおっしゃいます。この神は、風の神です。

また、お腹が空いた時にお生みになられました子を倉稻魂命(うかのみたまのみこと)とおっしゃいます。

また海の神たちをお生みになられました。少童命(わたつみのみこと)とおっしゃいます。

山の神たちを山祇(やまつみ)とおっしゃいます。

水門の神たちを速秋津日命(はやあきつひのみこと)とおっしゃいます。

木の神たちを句句廼馳(くくのち)とおっしゃいます。

土の神を埴安神(はにやすのかみ)とおっしゃいます。

このようにして、万物の神すべて残らずお生みになられました。

 

火神軻遇突智(かぐつち)をお生みになられました時に、母の伊弉冉尊は焼かれお亡くなりになられました。

伊弉諾尊は恨んで

「たった子供ひとりと、我が愛する妻とを交換するとは!」

と仰せられ、枕元に伏せっては泣き、足元に伏せっては涙を流して号泣しました。

その涙から神が生まれました。畝丘の樹下にいらっしゃいます神で、啼澤女命(なきさはめのみこと)とおっしゃいます。

 原文

一書曰、伊弉諾尊與伊弉冉尊、共生大八洲國。然後、伊弉諾尊曰「我所生之國、唯有朝霧而薫滿之哉。」乃吹撥之氣、化爲神、號曰級長戸邊命、亦曰級長津彥命、是風神也。又飢時生兒、號倉稻魂命。又、生海神等號少童命、山神等號山祇、水門神等號速秋津日命、木神等號句句廼馳、土神號埴安神。然後、悉生萬物焉。至於火神軻遇突智之生也、其母伊弉冉尊、見焦而化去。于時、伊弉諾尊恨之曰「唯以一兒、替我愛之妹者乎。」則匍匐頭邊、匍匐脚邊而哭泣流涕焉、其淚墮而爲神、是卽畝丘樹下所居之神、號啼澤女命矣。

 かんたん解説

この第五段一書(6)が、古事記に最も近しい内容となっています。まずは、万物に宿る神々が生まれます。

万物の神々

風の神→食物の神→海の神たち→山の神たち→港の神たち→木の神たち→土の神→火の神と生んでいきました。

海、山、港(河口)、木の神には「等」がくっついているので、複数いらっしゃるということでしょうか。

この中で食物の神「倉稲魂命」だけが少し異質ですね。後に「稲荷神」と称される神なのですが、食料ですから生まれる順番としては、もっと後ろの方で生まれるほうがしっくりきますよね。

古事記の宇迦之御魂神と同一神とされます。古事記では須佐之男命の御子として生まれています。

風の神は「神の息吹き」生命を司るとも言われています。同じく、食べ物の生命の維持に不可欠ですから、このような順番にしたのかな?と思ったりしてます。

別の見方では、、、

古代氏族の成立あるいは渡来を意味しているのかもと思ったりしましたが、そう考えたとしても、「倉稲魂命」=「秦氏」は少し異質ですね。もっと後ろでないとイカンです。

 

カグツチから現れた神々

とうとう、佩いていた十握劒で軻遇突智を三段にお切りになられました。

それらが、それぞれ神となりました。

劒の刃から滴り落ちた血が、天安河辺(あめのやすのかはら)にある五百箇の磐石となりました。これが経津主神(ふつぬしのかみ)の祖です。

また、劒の鐔(つば)から滴り落ちた血が、激しく散って神となりました。甕速日神(みかはやひのかみ)とおっしゃいます。次に熯速日神(ひのはやひのかみ)。この甕速日神は武甕槌神(たけみかづちのかみ)の祖です。

ある話では、甕速日命。次に熯速日命。次に武甕槌神が生まれたともいいます。

また、劒の鋒(さき)より滴り落ちた血が、激しく散って神となりました。磐裂神(いはさくのかみ)とおっしゃいます。次に根裂神(ねさくのかみ)。次に磐筒男命(いはつつのをのみこと)。

ある書では、磐筒男命と磐筒女命(いはつつのめのみこと)ともいいます。

また、劒の頭(つか)から滴り落ちた血が激しく散って神となりました。闇龗(くらおかみ)とおっしゃいます。次に闇山祇(くらやまつみ)。次に闇罔象(くらみつは)とおっしゃいます。

 原文

遂拔所帶十握劒、斬軻遇突智爲三段、此各化成神也。復劒刃垂血、是爲天安河邊所在五百箇磐石也、卽此經津主神之祖矣。復劒鐔垂血、激越爲神、號曰甕速日神、次熯速日神、其甕速日神是武甕槌神之祖也、亦曰甕速日命、次熯速日命、次武甕槌神。復劒鋒垂血、激越爲神、號曰磐裂神、次根裂神、次磐筒男命、一云磐筒男命及磐筒女命。復劒頭垂血、激越爲神、號曰闇龗、次闇山祇、次闇罔象。

 かんたん解説

さて、火の神が斬られて、その血液から神々が生まれました。

火の神由来の神々ですから、人類が火をコントロールすることによって開発された革新的なものが神として現れたと考えられますね。

剣の刃から生まれた神

経津主神の祖となる五百箇の磐石が生まれました。まずは、この石が始まりとなります。そして、最後に経津主神が生まれてくるのです。

剣のツバから滴った血からは、

甕速日神(みかはやひのかみ)は、甕=かめ、速=強調語、日=神霊で、甕の神霊となります。穀物の種を貯蔵するの神霊です。

熯速日神(ひのはやひのかみ)は、熯=渇くとか炙る・炒めるというような意味らしいです。干ばつの神霊?炙る神霊

古事記では、「ひ」に「樋」(とい=細い水管)の字を充ててますので、水路の神でしょう。

武甕槌神(たけみかづちのかみ)は、武=勇猛な、甕=かめ、槌=ハンマーなので、勇猛な甕ハンマーの神霊

これらの神名を眺めていると、農耕の発展の象徴のように見えます。

また、大昔の製鉄の工程とみることもできます。

  1. 砂鉄が含まれた五百個の花崗岩ハンマーで砕く。
  2. それらを水路に流して、比重の差で砂と鉄を分別する。
  3. 傾斜地に、いくつかのをおいて水路を渡し、2.の行程を何回か繰り返す。
  4. 純度の高い砂鉄が収集できる。
  5. それを炉(甕)に入れて炙って溶かす。
  6. ハンマーで叩いて強度を上げる。

この結果、鉄器が鋳造されるのです。経津主神です。

経津主神(ふつぬしのかみ)は、「フツ」という音が、剣で斬るときの音を表現していると言われていますが、稲を刈る音のようにも思えます。いずれにしても鉄器の神と思われます。

剣の先から滴った血からは、、、

磐裂神(いはさくのかみ)は、鉄器が出来たことで、大きな磐も砕くことができるようになり、農地の開墾が容易になったことの象徴でしょう。

根裂神(ねさくのかみ)も、同じく鉄器が出来て、地中で邪魔だった木の根を掘り起こすことが容易になったということの象徴かと。

磐筒男命(いはつつのをのみこと)は、その結果、広い農地が確保出来たということなのかな?と思います。

剣のツカから滴った血からは、、、

この三柱は、今までの話の流れの中に組み込む形では、上手に説明ができません。ごめんなさい。

闇は谷間とか谷合とかの、日の当たりにくい場所をさすようです。ですから、、、

闇龗(くらおかみ)は、谷間を流れる川の神霊となります。オカミは龍神ともいまれています。

闇山祇(くらやまつみ)は、古事記では闇山津見神としてカグツチの陰部に現れます。陰部は足と足の付け根ですから、山の尾根と尾根が分かれるところ、すなわち谷の始まりの部分の神霊なのでしょう。

闇罔象(くらみつは)は、谷間に湧き出る泉の神霊でしょうか。

 

土器を作るにも、鉄を採取するにも、水と土が必要ですから、水の神と磐を切り出す所の山の神が生まれたのかと。

また、古代の製鉄は山の中の川筋で行われていたのではないでしょうか。そういう意味も込めて「闇」を付けた?

想像です。

スポンサーリンク