日本書紀|第十九代 允恭天皇⑩|梨軽皇子・軽大娘皇女の近親相姦

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木梨軽皇子きなしのかるのみこ軽大娘皇女かるのおほいらつめのみこの禁断の恋

允恭23年 甲戌きのえのいぬ 434

三月七日 木梨軽皇子きなしのかるのみこを立てて皇太子とされました。容姿端麗で、見る人は自然と感動しました。また、同母妹の軽大娘皇女かるのおほいらつめのみこもまた妙艶な美女でした。

太子は、ずっと、軽大娘皇女かるのおほいらつめのみこと合わさりたいと思っておられたが、罪になることを恐れて黙っていました。しかし、その感情はますます盛んになり、死にそうなほどでした。

このまま虚しく死ぬなんて、罪となろうとも、もう我慢などできないと思いました。そして遂に密かに通じられましたが、(罪悪感で)塞ぎこんで少し休んでいました。そこで、詠まれた歌

あしひきの やまだをつくり やまだかみ したびをわしせ したなきに わがなくつま かたなきに わがなくつま こぞこそ やすくはだふれ

あしひきの 山田を作り 山高み 下桶を走せ 下泣きに 我が泣く妻 片泣きに 我が泣く妻 今夜こそ 安く肌触れ

山田を造って、その山が高いので、地中に樋を通したよ だから 人目を忍んで私が恋泣きする妻よ 独りで私が泣く恋しい妻よ 今宵こそは 安心して肌に触れ合おう

 原 文

廿三年春三月甲午朔庚子、立木梨輕皇子爲太子、容姿佳麗、見者自感。同母妹輕大娘皇女亦艶妙也。太子恆念合大娘皇女、畏有罪而默之。然感情既盛、殆將至死。爰以爲、徒空死者、雖有罪、何得忍乎。遂竊通、乃悒懷少息、因以歌之曰、

阿資臂紀能 椰摩娜烏菟勾利 椰摩娜箇彌 斯哆媚烏和之勢 志哆那企貳 和餓儺勾菟摩 箇哆儺企貳 和餓儺勾菟摩 去鐏去曾 椰主區泮娜布例

 

軽大娘皇女かるのおほいらつめのみこが伊予へ流される

允恭24年 乙亥(きのとのゐ) 435

六月 夏だというのに、御膳の羹汁しるものが凍りつきました。天皇は怪しまれて、原因をうらなわせました。

うらないの者が、

「内に乱れがあります。思うに近親相姦でしょう」

と言いました。その時ある人が、

木梨軽皇子きなしのかるのみこが同母妹の軽大娘皇女かるのおほいらつめのみことよこしまな関係を持っています」

と言いました。早速、お調べになられた結果、事が事実だと判った。

太子は儲君もうけのきみであるため、刑に処すことが出来ないため、軽大娘皇女かるのおほいらつめのみこを伊予に移しました。

この時に、太子が詠んだ歌

おほきみを しまにはぶり ふなあまり いがへりこむぞ わがたたみゆめ ことをこそ たたみといはめ わがつまをゆめ

大君を 嶋に放り 船余り い還り来むぞ 我が畳斎め 言をこそ 畳と言はめ 我が妻を斎め

大君を島に流したならば、船が余って、帰って来るだろうから、畳を清く保っておくように 言葉では畳と言ってはいるが 本心は、我が妻よ、清く保っていてくださいよ

また歌を詠みて

あまだむ かるをとめ いたなかば ひとしりぬべみ はさのやまの はとの したなきになく

天だむ 軽乙女 甚泣かば 人知りぬべみ はさの山の 鳩の 下泣きに泣く

軽の乙女よ ひどく嘆き悲しむと、人に知られてしまいます 私は、はさの山の鳩のように忍び泣きしています

 原 文

廿四年夏六月、御膳羹汁、凝以作氷。天皇異之、卜其所由、卜者曰「有內亂、蓋親々相姧乎。」時有人曰「木梨輕太子、姧同母妹輕大娘皇女。」因以、推問焉、辭既實也。太子是爲儲君、不得加刑、則移大娘皇女於伊豫。于時太子歌之曰、

於裒企彌烏 志摩珥波夫利 布儺阿摩利 異餓幣利去牟鋤 和餓哆々瀰由梅 去等烏許曾 哆多瀰等異泮梅 和餓菟摩烏由梅

又歌之曰、

阿摩儾霧 箇留惋等賣 異哆儺介縻 臂等資利奴陪瀰 幡舍能夜摩能 波刀能 資哆儺企邇奈勾

 ひとことメモ

近親相姦

同母の兄妹や姉妹、親子といった血縁関係が近い男女は、タブー視されていたことは、この本文でお分かりの通りです。

しかし、異母兄妹や姉妹、あるいは従妹は、一応OKだったようです。ただこれは血統というものを大切にした皇族なればこそでしょう。

旧石器時代の夫婦のDNAを調査したところ、基本的に他人同士だったそうです。種を健全に保つため、動物は本能的に近親婚を避けるらしいですが、ホモサピエンスもそうだったのかもしれません。

あるいは、先天性奇形が生まれることを経験値として蓄積していったか。

一方で、ネアンデルタール人は近親者同志の結婚が行われていました。だから絶滅したのかもしれませんね。

ちなみに、兄と妹の結婚というと、イザナギとイザナミ。

最初の子は ”ヒルコ” という骨のない不具の子でした。また泡のような子 ”アワシマ” も生まれてます。近親相姦はダメだということを伝承したかったのではないでしょうか。

 

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