日本書紀|第二十一代 雄略天皇⑪|子守りの蜾蠃(すがる) / 三諸山の大蛇

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子守りの蜾蠃すがる

雄略6年 壬寅みずのえのとら 462

二月四日 天皇が泊瀬の小野はつせのおのに御幸された時に、山野の地勢をご覧になり、感動されて詠まれた歌。

こもくりの はつせのやまは いでたちの よろしきやま わしりでの よろしきやまの こもくりの はつせのやまは あやにうらぐはし あやにうらぐはし

こもくりの 泊瀬の山は 出で立ちの よろしき山 走り出の よろしき山の こもくりの 泊瀬の山は あやにうら麗し あやにうら麗し

泊瀬の山は、山容が 美しい山だ 山の裾野も 美しい山だ 泊瀬の山は、なんとも美しい ほんとうに美しい

そこで、この小野を名付けて、道小野みちのおのという。

三月七日 天皇は、后妃に自ら桑を摘ませて、養蚕をお勧めになろうとされ、蜾蠃すがる 蜾蠃は人の名である。に命じて、国内のかいこを集めさせられた。ところが蜾蠃すがるは間違って嬰児あかごを集めて天皇に献上しました。

天皇は大笑いされ、嬰児をそのまま蜾蠃すがるに賜って、

「お前が自分で養うがよい」

とおっしゃいました。

蜾蠃すがるは、宮垣みやかきの近くで嬰児を育てました。こんなことから、少子部連ちいさこべのむらじかばねを賜りました。

四月 呉国が使者を遣わして、朝貢しました。

 原 文

六年春二月壬子朔乙卯 天皇遊乎泊瀬小野 觀山野之體勢 慨然興感歌曰

舉暮利矩能 播都制能野麼播 伊底拕智能 與慮斯企野麼 和斯里底能 與盧斯企夜磨能 據暮利矩能 播都制能夜麼播 阿野儞于羅虞波斯 阿野儞于羅虞波斯

於是 名小野曰道小野

三月辛巳朔丁亥 天皇 欲使后妃親桑以勸蠶事 爰命蜾蠃 蜾蠃人名也 此云須我屢 聚國內蠶 於是蜾蠃 誤聚嬰兒奉獻天皇 天皇大咲 賜嬰兒於蜾蠃曰「汝宜自養 」蜾蠃卽養嬰兒於宮墻下 仍賜姓爲少子部連 夏四月 吳國遣使貢獻也

 ひとことメモ

蜾蠃すがる

蜾蠃すがるとは、ジガバチという蜂の古名だそうです。

ジガバチは、地中に巣を作り、幼虫の餌となるイモムシを毒針で仮死状態にして巣に入れ、そこの卵を産み付けます。仮死状態にするのは腐らないようにするため。頭いいですね。卵から出てきたジガバチの幼虫は、イモムシを食べて大きくなり蛹となり、成虫となって飛び立ちます。

この巣穴を掘るときや、産卵して蓋をするときは、頭を振動させて掘ったり叩き固めたりします。工事現場のタンピンランマーみたいに。その時にジガジガと音を立てるので、ジガバチ。

子守りの蜾蠃すがるにはうってつけの名前ですな。

大笑いした天皇

なんだか、天皇の性格が変わってきたような。

ひと昔前なら間違いなく、

「朕の命令を取り違えるとは不届き千万!成敗してくれるわ!そこへなおれ!」

と瞬殺されたでしょうに。

 

三諸山の神を捕まえる?

雄略7年 癸卯みずのとのう 463

七月三日 天皇は、少子部連蜾蠃ちいさこべのむらじすがるに詔して、

「朕、三諸岳みもろのやまの神のお姿を見たいと思う。 ある話では、この山の神は大物主神であるとも、或はまた、菟田の墨坂神であるとも お前は人より力が強いから、行って捕まえてこい」

とおっしゃいました。蜾蠃すがるは、

「では、試しにやってみましょう」

と答えました。

三諸岳に登り大蛇を捕らえて、天皇に献上しました。天皇は斎戒されませんでした。

大蛇は雷のような音を響かせ、目を赤々と輝かせました。天皇は畏れられ、目を覆って見ることなく、殿に隠れられました。そして大蛇は岳に放たれました。そんなことで、蜾蠃すがるは名を賜っていかづちとしました。

 原 文

七年秋七月甲戌朔丙子 天皇詔少子部連蜾蠃曰「朕 欲見三諸岳神之形 或云「此山之神爲大物主神也 」或云「菟田墨坂神也 」汝 膂力過人 自行捉來 」蜾蠃答曰「試往捉之 」乃登三諸岳 捉取大蛇 奉示天皇 天皇不齋戒

其雷虺々 目精赫々 天皇畏 蔽目不見 却入殿中 使放於岳 仍改賜名爲雷

 ひとことメモ

三諸山の神とは?

天皇は三諸山の神を捕らえよと命令しました。捉えてきたのは大蛇。その大蛇があまりにも恐ろしかったので逃がしました。

さて、だいたいにおいて、神とは、その神を祀る氏族のことを指します。

たとえば、「一言主神を土佐に追放した」といった記述があれば、「葛城氏を朝廷から追放した」という意味になりましょう。

今回、三輪の神(三諸山の神)は捕らえることが出来なかったわけですが、この場合、三輪の神とは三輪氏です。ですから、天皇は三輪君を取り潰そうとしたができなかったということなのでしょう。

呪詛の効果?

雄略天皇紀の即位前の説話に戻りますが、、、

皇位継承を巡って身の危険を感じた御馬皇子は、三輪君の邸宅へ向かいました。しかし、その途中で襲われ殺されます。殺されるその時、三輪山麓の磐井という湧水に「天皇だけはこの水を飲むことができない」と呪詛をしました。

この呪詛の効果で三輪の神(三輪君)は守られた、という構成なのではないかと私は想像します。

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