第七段 一書(3)②|素戔嗚尊の再来と誓約

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素戔嗚尊の再来と誓約

その後、素戔嗚尊は

「神々は私を追放した。いよいよ永久に去るときがきたようだ。しかし、姉上に会わずして、勝手に一人で去ることなどできようか」

とおっしゃり、天や国に嵐を巻き起こしながら、天に戻って行きました。

これを見た天鈿女(あめのうずめ)が、日神に報告しました。すると日神は、

「弟が天に上って来るのは、善い心からではなく、きっと、我が国を奪おうとしているのだろう。私は婦女ではあるが、そうしてこれを避けたりしようか!」

とおっしゃり、武装されました。以下略

そこで、素戔嗚尊は誓約(うけひ)をして、

「私に悪意があって、再び天上って来たのならば 、私が玉を噛んで生む子は必ず女子でしょう。もしそうなれば、その女の子を葦原中国に降してください。

もし、善い心ならば、きっと男子を生むでしょう。もしそうになれば、その男の子に天上を治めさせてください。

また、姉上の生む子も、またこの誓約と同じ条件にようにいたしましょう」

とおっしゃいました。そこで、日神が、まず十握劒を噛まれました。以下略

素戔嗚尊は、くるくると左の髻(みづら)に巻いていた五百箇統(いほつみすまる)の瓊(たま)の緒を解き、玉の触れ合う音もさやさやと、天渟名井(あめのぬなゐ)に濯ぎ浮かべました。

そして、その玉の端を噛んで、左の手のひらに置いて生まれた子が、

正哉吾勝勝速日天忍穂根尊(まさかあかつかちはやひあまのおしほねのみこと)

です。

次に、右の玉を噛んで、右の掌に置いて生まれた子が

天穂日命(あまのほひのみこと)です。
この命は出雲臣・武蔵国造(むさしのくにのみやつこ)・土師連(はじのむらじ)らの遠祖です。

次に天津彥根命(あまつひこねのみこと)。
この命は茨城国造(うばらきのくにのみやつこ)・額田部連(ぬかたべのむらじ)らの遠祖です。

次に活目津彥根命(いくめつひこねのみこと)。

次に熯速日命(ひのはやひのみこと)。

次に熊野大角命(くまののおほくまのみこと)です。

併せて六柱の男神です。

そこで素戔嗚尊は日神に

「私が再び昇って来ましたのは、神々が私を根国に追放処分をしましたので、今まさに向かおうとしています。

しかし、姉上にお会いできなければ、耐え難いものがありました。ですので、本当に清き心で再び昇って来たのです。

でも、こうやってお目にかかることができましたので、神々の意のままに、これより永久に根国に向かいます。

どうか姉上におかれましては、天の国をお照らしになり、平安にお過ごしください。

また、私が清き心で生んだ子供たちを姉上に奉ります」

とおっしゃるや、また、天を降っていかれました。

原文

是後、素戔嗚尊曰「諸神逐我、我今當永去。如何不與我姉相見而擅自俓去歟。」廼復扇天扇國、上詣于天。時、天鈿女見之而告言於日神也、日神曰「吾弟所以上來、非復好意。必欲奪之我國者歟。吾雖婦女、何當避乎。」乃躬裝武備、云々。於是、素戔嗚尊誓之曰「吾、若懷不善而復上來者、吾今囓玉生兒、必當爲女矣、如此則可以降女於葦原中國。如有淸心者、必當生男矣、如此則可以使男御天上。且姉之所生、亦同此誓。」於是、日神先囓十握劒、云々。

素戔嗚尊、乃轠轤然、解其左髻所纒五百箇御統之瓊綸、而瓊響瑲瑲、濯浮於天渟名井。囓其瓊端、置之左掌而生兒、正哉吾勝勝速日天忍穗根尊。復囓右瓊、置之右掌而生兒、天穗日命、此出雲臣・武藏國造・土師連等遠祖也。次天津彥根命、此茨城國造・額田部連等遠祖也。次活目津彥根命、次熯速日命、次熊野大角命、凡六男矣。於是、素戔嗚尊、白日神曰「吾所以更昇來者、衆神處我以根國、今當就去、若不與姉相見、終不能忍離。故、實以淸心、復上來耳。今、則奉覲已訖、當隨衆神之意、自此永歸根國矣。請、姉照臨天國、自可平安。且吾以淸心所生兒等、亦奉於姉。」已而、復還降焉。

簡単な解説

この一書(3)を第六段の続きとして全体通してみてみますと、、、

第六段が、、、

素戔嗚尊は、伊弉諾尊に追放を言い渡されて、挨拶のために天上に上りました。そして誓約で子を生みました。そして誓約に勝ちました。

ここから第七段一書(3)、、、

勝ちに乗じて高天原に居座ります。もともと悪い心だったのでしょうか。多くの悪事を働きます。たくさんの天津罪を犯したことで天津神たちから追放を言い渡され、天を降りました。

そして、暴風雨にさらされて辛い思いをして反省したのか、今度は本当に清い心で再び挨拶のために天上へ昇ってきて、誓約で子を生みました。

という流れになるのでしょう。

しかしこれだと、誓約を2回行ったことになってしまいます。子も2回生むことになります。

それではおかしなことになりますので、考え方としては2つ。

  1. 1回目の誓約はなかった。あるいは子は生まれなかった。
  2. 第六段も含めた異伝である。

「1回目の誓約がなかった・・・・」だとしても、誓約が成立しないと素戔嗚尊が天に居座る理由が説明されていないことになります。

そもそも、根の国への追放は伊弉諾尊から言い渡されています。この書で天津神たちが重ねて追放処分を言い渡すのもおかしいです。

第六段も含めた異伝である」だとすると、第五段の最後「伊弉諾尊に追放を言い渡された」直後に、「素戔嗚尊も天に三つの田を持っていました」というとてつもない急展開です。

天に昇ってくる場面もなければ、天に田を持っている理由の説明もつかないのです。

結論。わからないのです。

ですが、個人的には、「第六段も含めた異伝である」を推します。

それは、素戔嗚尊と天照大神の子である天忍穂耳尊が皇統を繋いでいくことになるからです。

罪を犯した素戔嗚尊の子が皇統の最初とは、いかがなものでしょうか。

  • 罪を犯す前の清い心か悪い心かわからないままで素戔嗚尊が生んだ子(第六段)
  • 最後の最後に改心した素戔嗚尊が生んだ子(第七段一書(3))

皆さんは、どちらが清い子と思います?

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