第九段 一書(2)③|木花開耶姫と磐長姫

2020年6月22日

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木花開耶姫と磐長姫

天津彥火瓊瓊杵尊は、日向の槵日の高千穂峯(くしひのたかちほのたけ)に降り立ち、荒れた不毛の土地から、丘続きに良い土地を探し求めて、浮島の平なところに立ち、そこの国主(くにのぬし)の事勝国勝長狹(ことかつくにかつながさ)を呼んで尋ねると、

「ここに国があります。お好きなようになさいませ。」

と答えました。

皇孫は、そこに宮殿を立ててゆっくりと過ごしました。

ある日、海辺に出かけられ、一人の美人(をとめ)を見つけました。

「あなたは誰の子か」

と尋ねると、

「大山祇神の子です。名は神吾田鹿葦津姫(かむあたかしつひめ)、亦の名は木花開耶姫と言います。」

と答えました。そしてさらに続けて

「姉に磐長姫(いはながひめ)がいます」

と申し上げました。

皇孫が、

「そなたを妻にしようと思うが、そなた、どうだ?」

と尋ねると、

「父の大山祇神にお尋ねください。」

と答えました。

そこで、皇孫が大山祇神に

「私はお前の娘を見初めた。ぜひとも妻にしたいと思う。」

とおっしゃいました。そこで、大山祇神は二人の娘に多くの進物を持たせて献上しました。

皇孫は、姉の方は醜いと思って召されず、妹は美人として召されました。すると一夜にして懐妊しました。

磐長姫は大変恥じ入り、

「もし天孫が、私を退けずに召されておられれば、生まれる子の寿命は長く、堅い岩のように永久に栄えたことでしょう。しかし、そうではなく、妹だけを召されました。だから、生まれる子は木の花のように短い命で散り落ちることでしょう。」

と恨み呪いました。

ある話では、磐長姫は恥じ恨んで、唾を吐いて泣き、

「この世の人々は、木の花のように儚く移ろい、衰えることでしょう。」

と言った、といいます。

これが世の人の命は儚く終わってしまう謂れです。

 原文

故、天津彥火瓊瓊杵尊、降到於日向槵日高千穗之峯、而膂宍胸副國、自頓丘覓國行去、立於浮渚在平地、乃召國主事勝國勝長狹而訪之。對曰「是有國也、取捨隨勅。」時皇孫因立宮殿、是焉遊息。後遊幸海濱、見一美人。皇孫問曰「汝是誰之子耶。」對曰「妾是大山祇神之子、名神吾田鹿葦津姬、亦名木花開耶姬。」因白「亦吾姉磐長姬在。」皇孫曰「吾欲以汝爲妻、如之何。」對曰「妾父大山祇神在。請、以垂問。」皇孫因謂大山祇神曰「吾見汝之女子、欲以爲妻。」於是、大山祇神、乃使二女、持百机飲食奉進。時皇孫、謂姉爲醜不御而罷、妹有國色引而幸之、則一夜有身。故磐長姬、大慙而詛之曰「假使天孫、不斥妾而御者、生兒永壽、有如磐石之常存。今既不然、唯弟獨見御、故其生兒、必如木花之移落。」一云、磐長姬恥恨而唾泣之曰「顯見蒼生者、如木花之、俄遷轉當衰去矣。」此世人短折之緑也。

 かんたん解説

古事記と同じですので、特にございません。

ひとつだけ。

第九段一書(1)では「大山祇命」は女神でしたが、ここでは「父」となっています。だいたいの伝承は「父」です。

参照:古事記 上巻 天孫降臨③|木花咲耶比売命と石長比売命

 

木花開耶姫の火中出産

この後、神吾田鹿葦津姫が皇孫に

「私は天孫の子を身籠りました。私の一存で生むことはできません。」

と言うと、

「私が天神の御子であるとはいえ、さすがに一夜にして人を身籠らせるようなことはできない。もしかして、我が子ではないのではないか?」

と答えた。

この為、木花開耶姫は大変に恥じ恨んで、すぐに出口のない産屋を作り、

「私の身籠った子が他の神の子ならば、無事ではないでしょう。本当に天孫の子ならば、無事に生まれるでしょう。」

と誓約(うけい)して、産屋の中に入り、火をつけて焼きました。

炎が最初に立ち昇りはじめた時に生まれた子を火酢芹命(ほのすせりのみこと)といいます。

次に、火が燃え盛る時に生まれた子を火明命(ほのあかりのみこと)命といいます。

次に、生まれた子を彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)といいます。亦の名は火折尊(ほのをりのみこと)といいます。

 原文

是後、神吾田鹿葦津姬、見皇孫曰「妾孕天孫之子。不可私以生也。」皇孫曰「雖復天神之子、如何一夜使人娠乎。抑非吾之兒歟。」木花開耶姬、甚以慙恨、乃作無戸室而誓之曰「吾所娠、是若他神之子者、必不幸矣。是實天孫之子者、必當全生。」則入其室中、以火焚室。于時、燄初起時共生兒、號火酢芹命。次火盛時生兒、號火明命。次生兒、號彥火火出見尊、亦號火折尊。

 かんたん解説

こちらは、第九段本文とほぼ同じで、生まれる順番が違います。

本文は、

  1. 火闌降命(ほのすそりのみこと)
  2. 彥火火出見尊(ひこほほでみのみこと)
  3. 火明命(ほのあかりのみこと)

一書(2)は、

  1. 火酢芹命(ほのすせりのみこと)
  2. 火明命(ほのあかりのみこと)
  3. 彥火火出見尊(ひこほほでみのみこと)

2と3が逆転しています。

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