古事記|天孫降臨③|木花咲耶比売命と石長比売命
木花之佐久夜毗賣と天皇の寿命
現代語
邇邇芸命は笠沙御前(かささのみさき)で、とても美しい娘と出逢いました。

と邇邇芸命が尋ねますと、その娘が答えました。

木花之佐久夜毗賣(サクヤコノハナヒメ)とよばれています。




そこで、父の大山津見神に使者を遣わせました。
それを聞いた大神は大変喜んで、沢山の品物を持たせて、木花之佐久夜毗賣と姉の石長比賣の姉妹二人揃えて差し出しました。
ところが邇邇芸命は、姉はとても醜かったので一目見るなり送り返してしまわれ、妹の木花之佐久夜毗賣だけを手元において、一夜の交わりをなさいました。
大山津見神は石長比賣を返されたことに腹を立てました。

『石長比賣を娶るならば、天神の御子の命(いのち)は、雪が降り風が吹いても常に岩のように永遠に揺るぎないものになる。また、木花之佐久夜毗賣を娶るならば、木の花が咲き乱れるように栄える。』
と誓約(うけい)をしてから、二人を差し出したのだ!

邇邇芸命は、石長比賣を返し、木花之佐久夜毗賣だけと結婚した!
よって、天神の御子の寿命は木の花のように、限りあるものになろうぞ!
このような訳で、今に至るまで天皇の寿命には限りがあるのです。
原文
於是、天津日高日子番能邇邇藝能命、於笠紗御前、遇麗美人。爾問「誰女。」答白之「大山津見神之女、名神阿多都比賣此神名以音亦名謂木花之佐久夜毘賣。此五字以音。」又問「有汝之兄弟乎。」答白「我姉石長比賣在也。」爾詔「吾欲目合汝奈何。」答白「僕不得白、僕父大山津見神將白。」故乞遣其父大山津見神之時、大歡喜而、副其姉石長比賣、令持百取机代之物、奉出。故爾、其姉者、因甚凶醜、見畏而返送、唯留其弟木花之佐久夜毘賣、以一宿爲婚。
爾大山津見神、因返石長比賣而、大恥、白送言「我之女二並立奉由者、使石長比賣者、天神御子之命、雖雨零風吹、恒如石而、常堅不動坐。亦使木花之佐久夜毘賣者、如木花之榮榮坐、宇氣比弖自宇下四字以音貢進。此令返石長比賣而、獨留木花之佐久夜毘賣。故、天神御子之御壽者、木花之阿摩比能微此五字以音坐。」故是以至于今、天皇命等之御命不長也。
簡単な解説
誓約
天照大御神と須佐之男命の誓約、高御産巣日神の天若日子に対する誓約、に続いて、またまた誓約が登場です。
「もしこう、ならこうなる。もしこうなら、こうなる。」と宣言してから、ある行為を行って、その結果で占うという誓約。
占われる人の心は、はたして正しいのか、それとも邪心があるのかが、占いの結果として出てくるのです。
正か邪か、清か穢か。神道の基本的な是非の判断基準の一つです。
邇邇芸命さん、しくりましたね。
木花之佐久夜毗賣の出産
現代語
さて、その後、木花之佐久夜毗賣がやってきて、邇邇芸命にいいました。

と申し上げました。すると、邇邇芸命が、

であれば、我が子ではなく、きっと国神(くにつかみ)の子であろう。。。


もし国神の子であれば無事には産まれない!
あなた様の御子であれば無事に生まれる!
と誓約をして、
出口のない大きな産屋を作り、中に入ってから戸を土で塗り塞いで、いよいよ生まれるというときに、産屋に火を点けました。
ゴウゴウと盛んに燃え上がる中で生まれた御子の名は、
火照命(ホデリの命)
次に生まれた御子の名は火須勢理命(ホスセリの命)。
次に生まれた御子の名は火遠理命(ホヲリの命)、亦の名は天津日高日子穂穂手見命(アマツヒコヒコホホデミの命)
の三柱の神です。
原文
故後、木花之佐久夜毘賣、參出白「妾妊身、今臨產時。是天神之御子、私不可產。故、請。」爾詔「佐久夜毘賣、一宿哉妊、是非我子、必國神之子。」爾答白「吾妊之子、若國神之子者、產不幸。若天神之御子者、幸。」卽作無戸八尋殿、入其殿內、以土塗塞而、方產時、以火著其殿而產也。故、其火盛燒時、所生之子名、火照命此者隼人阿多君之祖、次生子名、火須勢理命須勢理三字以音、次生子御名、火遠理命、亦名、天津日高日子穗穗手見命。三柱。
簡単な解説
アホな邇邇芸命
石長比売命を一瞥しただけで突き返したのもそうですし、今回のハラスメント発言もそうですが、邇邇芸命さんにはデリカシーってもんが無さすぎる。アホです。
天照大御神の孫としてヌクヌクと育ったボンボンだったのかな。
立派な咲耶姫
それに対して、木花咲耶比売命が負けてないのが凄いです。ここまでのことが出来るのは、正しい心で行動しているからなんでしょうね。
私達も、こうありたいものです。
農耕神
火の中で生まれた三つ子ちゃんは、全員「火」が名前についてます。「火」は「穂」で、農耕に関わる神名でもあります。
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