海幸・山幸②|豊玉比売命との結婚

2019年9月4日

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海神の宮

現代語

火遠理命は、教えてくれた通りに進みました。すべてがその言葉通りだったので、桂の木に登ってみました。

そこに綿津見神の娘の豊玉毗賣(トヨタマビメ)の侍女が宝石でできた器を持って水を汲みに来ました。そして、井戸に影を見つけたのです。

上を見やると、そこに立派な男がいたので不思議に思いました。

男が水を求めたので、侍女は水を汲んで宝石の器に入れて男に差し出しました。すると、男は水を飲まずに、首飾りの玉を解いて口に含み、宝石の器に唾とともに吐き入れると、玉は器にくっついてしまいました

侍女はその玉を引きはがそうとしましたが離れなかったので、玉をつけたまま宝石の器を豊玉毗賣に差し上げました。

豊玉毗賣が、くっついた玉を見て侍女に問いました。

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あれまあ。門の外に人がいるのですか?
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人がいます。
井戸の傍の桂の木の上にいます。
とても立派な男の方です。
我が王にも増してとても貴い方です。

侍女が矢継ぎ早に答えます。

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その方が水をお求めになられたので差し上げますと、
飲まずに器に璵を唾とともに吐き入れられました。
その玉を除くことができなかったので、
そのまま持って参りました。

と答えました。

豊玉毗賣は興味を持ち、出て男を見るなり一目惚れして、交ぐわいをしたあと、父に報告しました。

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門に立派な方がおられます

そこで、綿津見神も外に出て御覧になり、一目見て言いました。

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あの方は天津日高の御子(あまつひこのみこ)だ。虚空津日高(そらつひこ)だ

綿津見神は火遠理命を宮殿の中に連れて入り、美智皮の敷物を何枚も重ねて敷き、その上に更に何枚もの絹の敷物を敷いて、その上に座らせ、多くの品物でもてなし、娘の豊玉毗賣と結婚させました。

それから、火遠理命は三年もの間、綿津見神の宮に住みました。

原文

故、隨教少行、備如其言、卽登其香木以坐。爾海神之女、豐玉毘賣之從婢、持玉器將酌水之時、於井有光。仰見者、有麗壯夫。訓壯夫云遠登古、下效此。以爲甚異奇。爾火遠理命、見其婢、乞欲得水。婢乃酌水、入玉器貢進。爾不飮水、解御頸之璵、含口、唾入其玉器、於是其璵著器、婢不得離璵。故、璵任著、以進豐玉毘賣命。

爾見其璵、問婢曰「若人、有門外哉。」答曰「有人、坐我井上香木之上、甚麗壯夫也、益我王而甚貴。故其人乞水故、奉水者、不飮水、唾入此璵、是不得離故。故任入將來而獻。」爾豐玉毘賣命、思奇、出見、乃見感、目合而、白其父曰「吾門有麗人。」爾海神、自出見、云「此人者、天津日高之御子、虛空津日高矣。」卽於內率入而、美智皮之疊敷八重、亦絁疊八重敷其上、坐其上而、具百取机代物、爲御饗、卽令婚其女豐玉毘賣。故、至三年、住其國。

簡単な解説

唾の呪力

首飾りの玉が唾で器にくっつきました。これは、唾には呪力があると信じられていたからです。

日本書紀では、伊邪那岐と伊邪那美が黄泉平坂でお別れをしたとき、伊邪那岐が唾を吐きました。その唾から速玉之男という神が現れました。熊野速玉大社に祀られていますね。

古代では、約束を固める時に、この呪力を使ったらしいです。

 

気がつくと3年

現代語

ある日、火遠理命は、綿津見神の宮に来た目的を思い出して、大きな溜息をつきました。

豊玉毗賣は、その溜息を聞き、父に相談しました。

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我が君は、ここに三年住んでおられますが、一度も溜息をつかれることはありませんでしたが、昨夜大きな溜息をつかれました。何か理由があるのではないかと思います.

そこで、大神が火遠理命に尋ねました。

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今朝、娘が、『三年居られて一度も溜息をつくことがなかったのに、昨夜は大きな溜息をつかれた。』と言っておる。何か訳がおありなのかな?ここにやってこられた訳は何だったのかな?

そこで、火遠理命は、兄の釣針を失い、それを返せと迫られた時のことを詳しく話しました。

それを聞いた綿津見神は、海の大小の魚をすべて呼び集めて、釣針を取った魚がいないか尋ねると、一匹の魚が答えました。

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この頃、鯛が、喉に骨が刺さって、物が食べられないと嘆いていますので、きっと鯛が取ったのでしょう。

原文

於是火遠理命、思其初事而、大一歎。故豐玉毘賣命、聞其歎以、白其父言「三年雖住、恒無歎、今夜爲大一歎。若有何由。」故其父大神、問其聟夫曰「今旦聞我女之語云、三年雖坐、恒無、今夜爲大歎。若有由哉、亦到此間之由奈何。」爾語其大神、備如其兄罸失鉤之狀。是以海神、悉召集海之大小魚問曰「若有取此鉤魚乎。」故諸魚白之「頃者、赤海鯽魚、於喉鯁、物不得食、愁言。故必是取。」

簡単な解説

ため息

古代では、ため息は霧になると信じられていたようです。なので、霧を見ると何処かに思い悩んでいる人がいてるんだな~と感じたそうですよ。

だから豊玉比売や大綿津見神は、敏感に反応したのでしょうね。大きなため息に。

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